年間第23主日「被造物を大切にする世界祈願日」A年(2020.9.6)

「すべてのいのちを守るために」

 

教皇フランシスコの回勅『ラウダート・シ:ともに暮らす家を大切に』の叫び

  丁度、五年前の2015年5月24日の聖霊降臨の祭日に教皇フランシスコは、全世界に向けて回勅『ラウダート・シ:ともに暮らす家を大切に』を発布されました。

 そのときの教皇ご自身の切なる思いを、次のように強調しておられます。

 「ローマ司教に選ばれたときに、導きとインスピレーションを願って選んだ名前の持ち主である、あの魅力的で人の心を動かさずにはおかない人物に触れないまま、この回勅を書くつもりはありません。聖フランシスコは、傷つきやすいものへの気遣いの最良の手本であり、喜びと真心(まごころ)をもって生きた、総合的なエコロジー(自然環境保全)の最高の模範であると、わたしは信じています。・・・彼は殊(こと)のほか、被造物と、貧しい人や見捨てられた人を思いやりました。」(同上10項参照)と。

 そして、教皇フランシスコが、昨年の訪日のためにお選びになったテーマは「すべてのいのちを守るため」でした。そこで、実質三日間にわたって各地で、熱のこもったメッセージをくださいました。

 そして、それにこたえるために、日本の司教団は、毎年、9月1日から10月4日までを、「すべてのいのちを守るための月間」と、定めました。

 しかも、本日は、教皇フランシスコが、制定なさった「被造物を大切にする世界祈願日」に、当たります。

 

エコロジカル(自然環境保全)な回心と環境教育の必要性

  教皇フランシスコは、その回勅で、まず、創世記の次の二個所をとりあげております。

 「神は言われた。『我々にかたどり、我々に似せて、人を造ろう。そして海の魚(うお)、空の鳥、家畜、地の獣(けもの)、地を這うものすべてを支配させよう。・・・神は彼らを祝福して言われた。『産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物すべてを支配せよ。』(創世記1.26-28)と。

 「主なる神は人を連れて来て、エデンの園に住まわせ、人がそこを耕し、守るようにされた。」(同上2.15参照)と。

 教皇フランシスコは、これら聖書の個所を次のように解説なさいます。

 「創世記の中の創造記事は、それぞれ抽象的で物語的な言語で、人間存在とその歴史的現実についての意味深長な教えを語ります。密接に絡み合う根本的な三つのかかわり、すなわち、神との関わり、隣人との関わり、大地との関わりによって、人間が生きることが出来ることを示唆(しさ)しています。聖書によれば、いのちにかかわるこれら三つの関わりは、外面的にもわたしたちの内側でも、引き裂かれてしまいました。この断絶が罪です。わたしたちがずうずうしくも神にとってかわり、造られたものとしての限界を認めるのを拒むことで、創造主と人類と全被造物との間の調和が乱されました。このことによって、わたしたちに与えられた、地を『従わせ』、『そこを耕し、守る』という治める役目にゆがみが生じたのであります。その結果、もともとは調和の取れていた人間と自然とのかかわりが不調和をもたらすようになりました。(創世記3.17-19参照)。」(回勅『ラウダート・シ』66項参照)・・・

 わたしたちは、神ではありません。・・・すなわち、ユダヤ・キリスト教の考えが、大地の『支配権』を人に委ねられる創世記の記事に基づいて、人間の本性を暴君的で破壊的なものとして描くことで、自然に対する無制限な搾取を助長してきたという告発です。・・・聖書が世界という園を『耕し守る』ように告げることを念頭に置いたうえで、その本文を文脈に沿い適切な解釈法をもって読まねばなりせん。『耕す』は培うこと、鋤(す)くこと、働き掛けること、『守る』は世話をし、見守り、保存することを意味します。」(同上67項参照)と。

 

気候活動家17歳のグレタの訴え

 教皇フランシスコの熱のこもった回勅に応えるかのように、スエーデンの気候活動家17歳の少女グレタが、地球環境を守るために具体的な行動を開始しました。まず、大人たちの地球環境問題に対する取り組み方に、抗議して首都のストックホルムの国会議事堂前の広場で、次のようなチラシ

 「私たち子どもは、いつも大人の言うとおりにするわけではありません。

 わたしたちは、大人のすることをします。あなたたち大人は、

 私の未来なんか気にしていません。だから私もあなたたちを気にしません。

 私はグレタ・トゥーンベリ、9年生。

 選挙当日まで、気候のための学校ストライキをします。」を、100枚用意し、たった一人で座り込みを始めたのであります。

 ところが、今では、この学校ストライキは全世界の子どもたちへ広がっています。そして、グレタは、重要な会議に出向いて行き、抗議活動を勢力的に進めています。たとえば、昨年の2月21日ベルギーのブリュッセルで開催された「EESC(欧州経済社会評議会)」で、次のような熱弁を振るいました。

 「多くの政治家たちは、私たちと話したがりません。いいでしょう、わたしたちも話したいと思いません。でも、科学者とは話してほしい。彼らの話を聞いてほしいのです。・・・科学者たちは何十年も訴えてきました。私たちは、皆さんがパリ協定(2015年12月、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議において採択された、20年以降の温室効果ガス排出削減等のための国際協定)とIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告に従うことを望んでいます。

・・・どうか、科学のもとに集結してください。これがわたしたちの要求です。・・・全く新しい考えが必要です。あなたがたがつくった政治システムは競争だらけです。勝つことがすべてなので、隙あらば他人をだまそうとします。そうやって支配力を高めようとしているのです。

 それを終わらせましょう。お互いに張り合うのをやめましょう。協力して、地球に残された資源を公平に分け合うのです。・・・わたしたちは自分たちの将来のためではなく、すべての人の将来のために闘っているのです。」と。

 最後に、この回勅で、教皇フランシスコは、エコロジカル(地球環境保全)な回心を、次のように呼び掛けておられます。

「自分の習慣を変えようとしない、一貫性に欠ける人たちがいます。したがって、そういう人々皆に必要なのは『エコロジカルな回心』であり、それは、イエス・キリストとの出会いがもたらすものを周りの世界との関わりの中で証(あかし)させます。神の作品の保護者たれ、との召命を生きることは、人徳(じんとく)のある生活には欠かせないことであり、キリスト者としての経験にとって任意の、或は付け加えられた要素ではありません。・・・アッシジの聖フランシスコの姿を思い起すことによって、私たちは、被造界との健全なかかわりが、全人格に及ぶ回心であることに気づかされます。」(同上217-8項参照)と、まさに自然環境を守るライフスタイルに切り替えることを、訴えておられます。

 

 

※関連記事(1996カトリック新聞に連載・佐々木博神父様の「主日の福音」より)

https://shujitsu-no-fukuin.hatenablog.com/entry/2019/09/01/000000

 

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