父と子と聖霊の名によって洗礼を授ける
今日の福音すなわちマタイによる福音書は、伝統的に十二使徒の一人であるマタイによって編集されたと伝えられて来ましたが、今日(こんにち)では、無名の編集者によって、西暦80年代にシリアのアンティオキアで編集された福音書であるというのが通説になっております。ですから、使徒ペトロを頭とする初代教会の宣教活動の体験を踏まえて編集された福音書と言えましょう。
そこで、早速、今日の朗読箇所ですが、当時、すでに実施されていた洗礼式の式文と考えられる「父と子と聖霊の名によって洗礼を授ける」という文言(もんごん)が入っています。
ちなみに、実際に三位一体の教義が確定したのは、まず西暦325年に開かれた二ケア公会議、続いて381年のコンスタンチノープル公会議によって完成した「二ケア・コンスタンチノープル信条」にほかなりません。
その信条は、次のような宣言によって始まります。
「わたしは信じます。唯一の神、全能の父、
天と地、見えるもの、見えないもの、すべてのものの造り主を。
わたしは信じます。唯一の主イエス・キリストを。
主は神の独り子、
すべてに先立って父より生まれ、
神よりの神、光よりの光、
まことの神よりの神、
造られることなく生まれ、父と一体。
すべては主によって造られました。
主は、わたしたち人類のため、
わたしたちの救いのために天からくだり、
聖霊によって、おとめマリアよりからだを受け、
人となられました。
・・・
わたしは信じます。
主であり、いのちの与え主(ぬし)である聖霊を。
聖霊は、父と子から出て、
父と子とともに礼拝され、栄光を受け、
また、預言者をとおして語られました。」と。
天地万物の創造主である父なる神の働き
ですから、この様に荘厳に宣言されている三位一体の唯一の神を、聖書を紐解くことによって、神の救いの壮大なドラマを振り返ることにより、三位一体の唯一の神の素晴らしい御業を確認できるのではないでしょうか。
それは、聖書に収められている最初の書物である創世記の冒頭で、天地万物の創造主なる神の御業をたたえる次のような荘厳な宣言で始まります。
「初めに、神は天と地を創造された。地は混沌であって、闇が深淵(しんえん)の上にあり、神の霊が水の上を覆うように舞っていた。神は仰せになった。
『光あれ。』すると、光があった。神はその光を見て、良しとされた」(創世記1.1-4a)
このくだりは、恐らく紀元前6世紀の捕囚時代に祭司たちによって編集されたと考えられますが、そこで聖霊は、「神の霊」として「水の上を動いていた。」と間接的に語られています。
また、神の創造の御業は、道具や材料などは一切使わず、まさにみことばによって万物を創造されたのであります。
したがって、新約時代になって誕生した初代教会で歌われていた「ロゴス賛歌」が、ヨハネ福音書の冒頭で、次のように謳われております。
「初めにみことばがあった。
みことばは神とともにあった。
みことば神であった。
・・・
すべてのものは、みことばによってできた。
・・・
みことばは人間となり、
われわれの間に住むようになった。
・・・
神を見た者は、いまだかつて一人もいない。
父のふところにいる独り子である神、
この方が神を啓示されたのである」(ヨハネ1.1-18参照)と。
父なる神が御子によって聖霊を注いでくださる
次に、今日の第二朗読で、使徒パウロは、聖霊の働きについて、次のように見事に説明してくれます。
「神の霊によって導かれる者は皆、神の子なのです。あなたがたは、・・・神の子とする霊を受けたのです。この霊によってわたしたちは、『アッバ、父よ』と呼ぶのです。この霊こそは、わたしたちが神の子どもであることを、わたしたちの霊と一緒に証ししてくださいます。」と。
さらにまた、イエスは、最後の晩餐の席上、弟子たちに聖霊について次のように約束なさいました。
「弁護者、すなわち、
父がわたしの名によってお遣わしになる聖霊、
その方がすべてのことをあなた方に教え、
わたしが語ったことをすべて思い起こさせてくださる。
・・・
わたしが父のもとから
あなたがたに遣わす弁護者、すなわち、
父のもとから出る真理の霊が来られるとき、
この方がわたしについて証ししてくださる。
また、あなた方も証しするであろう」(ヨハネ14.26-15.27参照)と。
ですから、イエスは天に昇られる直前、弟子たちに次のように宣言なさいました。
「あなたがたの上に聖霊が降ると、あなたがたは力を受ける。そして、エルサレムばかりでなく、ユダヤとサマリアの全土で、また、地の果てに至るまで、わたしの証人となる」(使徒1.89)と。
今週もまた、派遣されるそれぞれの家庭、学校、職場そして地域社会において、父と子と聖霊の唯一の神のすばらしさを、言葉と行いによって証(あかし)できるように共に祈りましょう。
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