待降節第2主日・B年(2020.12.6)

「荒れ野で叫ぶ声がする」

慰めよ、わたしの民を慰めよ(イザヤ40.1参照)

  では、早速今日の第1朗読を振り返ってみましょう。

 実は、このイザヤ書ですが、最近の研究の結果、三つに分けて、つまり1章から39章までを第一イザヤ、40章から55章までを第二イザヤ、そして56章から66章までを第三イザヤとし、三人の編集者がそれぞれ異った時代に編集したと考えられています。

  ですから、今日の朗読箇所は、第二イザヤによって、紀元前6世紀ごろ、時は捕囚時代に、まさに捕囚民に向けた希望と慰めのメッセージにほかなりません。しかも、この捕囚時代の試練の体験こそが、実は、ユダヤ教の原点となったと言えましょう。とにかく、第二イザヤは、その時のオリエント世界に新たに台頭して来た最初の王キュロスが、首都バビロンを目指して、刻々と近づいて来て、捕囚民を開放するであろうとすでに感じとっていたようです。しかも、それはキュロスに、油注がれた者つまりメシアであるという期待をかけていたのであります(イザヤ45.1参照)。ですから、第二イザヤの冒頭で、まさに神のことばを次のように伝えることが出来たのではないでしょうか。

「慰めよ、わたしの民を慰めよ、

 あなたの神は言われる。

 エルサレムの心に語り掛け、

 彼女に呼びかけよ、

 苦役の時は今や満ち、彼女の咎(とが)は償(つぐな)われた、と。

 罪のすべてに倍する報いを、主の御手(おんて)から受けた、と。」

 ここでの「エルサレム」は、具体的には捕囚民を指し、また、2節の「苦役の時」は、言うまでもなく捕囚を意味しています。

 とにかく、神は、ご自分の民の咎と罪という捕囚苦役を与えられましたが、それは、すでにもう過去のことになったというのであります。

 今は、まさに苦役の時は、満了し、代わって慰めの時が開始されようとしているのであります。

 ここで、注目すべきことですが、このような決定的な時の転換期における罪の赦しの体験であります。

 通常の赦しの体験は、罪人が回心して神のもとへ立ち帰るという体験ですが、この転換期においては、イザヤは、神の赦しの御業を、次のように大胆に宣言しています。

「わたしはあなたの背きを雲のように、罪を霧のように吹き払った。わたしに立ち帰れ、わたしはあなたを贖った。」(イザヤ44.22参照)と。

 つまり、わたしたちの回心に先立って、まず、神がわたしたちの罪を、全面的に赦してくださるので、そこで初めて神に立ち帰ることが出来るというのであります。これこそが、神の下さる無償の罪の赦しであることの主張であります。

 

主の道を整えその道筋をまっすぐにせよ(マルコ1.36参照)

  次に今日の福音ですが、マルコ福音記者が、初めて福音書という文学形式をあみだしたのですが、その冒頭の箇所で洗礼者ヨハネの活躍を描き、しかもそれがまさに旧約預言の成就(じょうじゅ)であると述べております。そこで、洗礼者ヨハネこそ、メシアの到来を準備するまさに先駆者として派遣されたのであり、聖霊で洗礼を授けるメシアは、実は、そこに来ておられるのです。

 すでに第一朗読で確認したように、第二イザヤの捕囚からの解放という預言は、紀元前539に成就しました。つまり、油注がれたキュロス王は、バビロンに無血入城し、捕囚民のエルサレム帰還を許可したのでイスラエルの民は、50年ぶりにエルサレムへと帰還を始めました。

 けれども、福音記者マルコにしてみれば、その開放は、第二イザヤの口を通して預言された「慰めよ、わたしの民を慰めよ」いう預言の前印(まえじるし)にすぎません。

 なぜなら、マルコは、バビロンからの解放をはるかに超えるメシア・イエスによる全人類の根本的な解放を、はっきりと目の当たりにしたからにほかなりません。

 ですから、イザヤ書を引用して「主の道を整え、その道筋をまっすぐにせよ」と先駆者ヨハネが、叫んだときの「道」は、もはや単なる場所の移動のための道ではありません。それは、まさにイエス・キリストが、わたしたちの心に入られる道であり、また私たちが、主イエスのもとへ向かうための「主の道」にほかなりません。

 そのために、「その道筋をまっすぐにせよ」とは、まず「悔い改める」ことですが、聖書でいう「悔い改める」とは、もっと根本的な「回心」の体験にほかなりません。つまり、自分のものの見方や価値観を、そして生き方をも福音を基準にして根本的に変えていくことなのです。しかも、この回心は、日々継続されなければなりません。なぜなら、自分を変えることは、まさに至難の体験だからであります。ですから、自力では不可能なことであり、まさに聖霊の働きに全面的に寄り縋(すが)ることが必要ではないでしょうか。

 この待降節中、実りある回心を体験できるよう共に祈りましょう。

 


【A4サイズ(Word形式)にダウンロードできます↓】

drive.google.com