年間第 18 主日日・C 年(2013.8.4)

「どんな貪欲にも注意を払い、用心しなさい」

 上にあるものに心を留め、地上のものに心を引かれないように

 パウロは、わたしたちが、洗礼を受けることによって、全く新しい、つまり復活のいのちを生きるために生れ変わるために、まず、古い自分つまり罪に死ななければならないと、次のよう断言しています。

「洗礼を受けてキリスト・イエスと一致したわたしたちは皆、キリストの死にあずかる洗礼を受けたのではありませんか。わたしたちはその死にあずかるために、洗礼によってキリストと共に葬られたのです。それは、キリストが御父の栄光によって死者の中から復活させられたように、わたしたちもまた、新しいいいのちに歩むためです。」(ローマ 6.3-4)

 ですから、同じパウロは、今日の第一朗読で、この「新しいいのちの歩み方」について具体的に勧告しているのです。

「あなたがたはキリストと共に復活させられたのですから、上にあるものを求めなさい。そこでは、キリストが神の右の座に着いておられます。上にあるものに心を留め、地上のものに心を引かれないようにしなさい。」

 この新しい生き方を実践できるのは、結局、キリストにすっかり心を奪われてしまったからにほかなりません。もし、そうでなければ、わたしたちは、どうしても、この地上的なものに心を引かれてしまい、いつの間にか貪欲になってしまうのではないでしょうか。そして、パウロが忠告しているように、結果的に偶像礼拝に陥ってしまう危険があるというのです。

 ですから、パウロは、自分自身のキリスト者として生き方の根本的な切り替えの体験を、極めて感動的に次のように告白しています。

「わたしは、生後八日目に割礼を受けた者、イスラエルの民、しかも、ベニヤミン族の出身で、生粋のヘブライ人です。・・・熱心さにかけては、教会を迫害したほどであり、律法による義という点では、非の打ち所がありませんでした。しかし、わたしにとって有利であったこのような事柄を、キリストの故に損失と思うようになりました。

  それどころか、わたしは、わたしの主キリスト・イエスを知ることのあまりのすばらしさの故に、すべては損失だと思っているのです。わたしは、このキリストの故に、すべてを失いました。しかし、それらのことなどは、屑にすぎなかったと思ってています。それは、キリストを得るためであり、わたしがキリストに結ばれた者として認められるためです」(フィリピ 3.5-9)

 

神の前に豊かになる

 ところで、イエスは、今日の福音で、これまた極めて実践的な忠告をなさっておられます。

 それは、兄弟同士が、親の残した遺産をめぐるゴタゴタの調停を依頼されたときであります。

 ですから、まず、次のように釘をさされました。「だれがわたしを、あなたがたの裁判官や調停人にしたのか。」と。

 そして、具体的に注意なさいました。

 「どんな貪欲にも注意を払い、 用心しなさい。有り余るほどの物を持っていても、人の命は財産によってどうすることもできないからである。」

 そして、「愚かな金持ち」のたとえを話されました。

 実は、詩編にもこのたとえに似たような祈りがあります。

 「彼らは、富を頼みとし、 宝の多いことを誇っている。

 ああ、人は誰も自分を贖うことはできない。

 自分の身代金を神に払うことはできない。

  ―魂の贖いの値は高く、いつまでも払いきることができないのだ―

  永遠に生き永らえるために、

 また、墓穴を見ないために。

 まことに人は見る、賢い者も死に、

 無知な者、愚かな者も等しく滅び、

 自分の富を他人に残すのを。

 たとえ地上で彼らの名が人の口に上っても、

 墓こそ終わりなき彼らの家、

 代々に至るまで彼らの住処。

 ・・・

 これこそ富を持つ者の行く末、

 美食に耽る者の成れの果て。

・・・

 人が富んでも、その家の宝が増しても、

 妬んではならない。

 死ぬとき、何ひとつ持っていけず。

 富も一緒に下っていかない。

・・・ 」(詩編 49.7-18)

 イエスは、はっきりと断言なさいます。

「自分のために富を積んでも、神の前に豊かにならない者はこのとおりだ。」と。

 では、「神の前に豊かになる」には、どうしたらよいのでしょうか。イエスは、続けて強調なさいます。

「あなたがたの持ち物を売って、施しなさい。自分のために、古びることのない財布を作り、尽きることのない宝を天に蓄えなさい。そこでは、盗人も近寄らず、虫も食い荒らさない。あなた方の宝のある所に、あなた方の心もある」

 先日また、「国境なき医師団」から、内戦で苦しみのどん底で苦しんでいる人々の報告がとどきました。そのさわりの箇所を朗読します。

「激しい紛争が続くシリアでは、2013 年 6 月現在、国内および周辺国で推計 680 万人もの人々が緊急に人道支援を必要としていると言われています。そして、敵対する陣営に包囲された地域には、国際援助が届かない状況が続いています。国内での活動には大きな困難が伴うものの、国境なき医師団は現在、現地で活動する数少ない国際援助団体としてシリアで五か所の病院を運営し、病院に来られない人々のための移動診療も拡大しています。

  内戦を逃れてシリアを出国した人は、すでに 160 万人に達するとみられますが、イラク、レバノン、ヨルダン、トルコなどの受け入れ各国は、急増し続ける難民の数に対応しきれておらず、清潔な水・食糧・医療の不足が緊急の課題となっています。・・・」

 神の前に豊かになれるよう具体的に愛の実践が出来るよう共に祈りたいと思います。